明殺50

ジーナ国が人民に対応できなくなった民主主義を捨てて既に
20年が経つ。国名はシーナ国となる。

捨てたといっても独裁政治に変わったというのではない。

簡単にいうと、司法、行政、立法がメイン300で管理された
統治というとピッタリくるだろうか。メイン300は、株予想のために設計された
メインキラをベースとして作られた有機性コンピュータのひ孫にあたるCコン用に
改造されたコンピュータで、それによってゆるく支配された世界と考えるとちょうどよい。

テレビ、ラジオ、ネット情報のみならず、電話の音声情報なども自動的に情報として読み取り、誇大なデータベースを構築していくのである。

年末近くになると、人民の興味は「明殺50」の発表である。存在していては人民に害を与えるとされる50名が発表されるのだ。

発表された人民個の情報は今まで表に出てこなかったその日にいっぺんに増え、
確実性を増す場合がほとんどなのだが、秘話などから温情ベースが一気に加速する
場合もある。

この50人が確実に処刑されるということではない。増え続ける情報によって温情が与えられると、コサインに一致を持って対象から除外されるのである。

年によっては50人を満たない数になる場合がある。

自己破滅したい者が混入するのではないかという懸念も300によってふるい落とされ
ている。

人が人を裁かなくなる。人が人を導かなくなる。人が人を評価しなくなる。これが
ジーナ国である。

平和チャイヨ――。