2008-01-01から1ヶ月間の記事一覧

キズラ 後

平家方、市松宗左衛門の末弟兵衛の子飼、義之岐は弓の使い手である。その武功は将宗左衛門も一目置くところであったという。 薪の束のように矢を担ぎ全ての矢を敵方に当て、矢がなくなるやとっさにはえている木の枝を折り矢にした。その腕前も倶利伽羅峠の戦…

キズラ 前

寛政5年、呉羽山ふもとで竹蔵(35)が熊に襲われ死亡。その熊には顔に傷があり「傷面(きずづら)」と呼ばれた。 が、村人たちは畏怖の念からか、または恐怖からか「キヅラ」と呼んだ。 熊は人を襲うことを覚えると、それがきっかけとなり次々に人を襲うと…

茶色はグリーンじゃないんだよ

あの緑色の「日本茶」ってことばは外国人だって知っている。 日本本来の茶ってイメージもある。 しかーし、茶色ということばはグリーンじゃない。 茶色ってウーロン茶、番茶なのど色ではないか。 ってことは一般大衆は茶色のお茶を飲んでいたんだろうなあと…

ああ無常

ずうっと昔のことじゃった。彦作のお父さんのお話じゃあ。 彦作のお父さん(以後、彦作父)はおじいの言いつけで呉羽山に薪を拾いに行かされたそうじゃ。彦作父は本を読むのが大好きだったので好きな本を持って山へ出かけた。 好きな本といってももう10篇も2…

冷蔵庫と湯沸かし器

ノターリ・クラーノはこの街に住んでいる。といっても駅前がねぐらである。ようするにフローシャである。歳は50そこそこか。この定位置のまえにはどこにいたのか誰も知らない。 そんな彼がいつの間にやら冷蔵庫をダンボールでこしらえた部屋のとなりに置い…

日本語教育の行方

終戦になって日本語教育が復活し、ジョーデンの教授法が良いというので、中途半端にオーディオリンガル((OL)が受け入れられました。本当に良いのか否かがわからずして、良くない!害があるという外国書物の批判とともにいっせいに悪者になっていしまい…

落ち武者が出るような山あいで(後)

あいさつ回りのあと会社に戻るとほかの社員が博之によそよそしい。本部長の川崎が来ているということであった。 川崎はにっこり笑いながら「やあ、ひさしぶり」といやになれなれしく博之をソファーに座らせた。 実は君も知っての通り、トップの交代、工場の…

落ち武者が出るような山あいで(中)

前田康之(65)。都内の中堅の大学を卒業後、出張でタイに赴き、そのまま若くして当地の所長となり15年間バンコック郊外に住む。 現地のホステスであったイクイットに一目ぼれし、結婚を迫る。結局200万円で手を打ち、転勤5年目に結婚する。当然親戚一同の反…

落ち武者が出るような山あいで(前)

久しぶりに旅に出た。 ほとんど知られていないローカル線に乗った。 一両編成でワンマン(車掌がいない)である。 一番前から二番目の席に座った。前には老夫婦が座った。 おばさん(お婆ちゃん?)の方が尋常じゃないはしゃぎかたをしていた。 夫婦かと思っ…