時間の「トコロ」文について

ことばがドリフトすることは言うまでもありませんが、
その移行は種々の仕方がありえます。
で、ノーマルなのは具体的から抽象的に進むベクトルです。
 
そういうわけで、「トコロ」をみると、場所という意味が本来なのですが、
「今、ご飯を食べたところです」のように時間の意味に移行しています。
 
ここから、本題。では、どういう意味でしょうか。下の文の違いは何でしょう。
 
①さっきご飯を食べました。
②さっきご飯を食べたところです。
 
上の2文に対して日本語教育では、「トコロ」は「食べた」を強調したものであると、
教えるように書かれてある場合が多いようです。
 
でも、それは説明になっているのでしょうか。強調って何?多分、現場(授業)では学生は
ふふんと思うかもしれませんが、使用の意味にはなっていないことを教師は知っていなければ
ならないでしょう。
 
でも、状況を考えれば、至極簡単です。「トコロ」文の文脈は働きかけが多いことでもわかるように、
「聞き手になんらかの関係がある」というマーカ(標識)になっているのです。
 
下の会話は電話がかかってくる場面です。 
A:今から一緒にファミレスに行かない?
B:あー、今から寝るところ。
 
この会話では、トコロ文を使って、聞き手に「断り」という想定を与えています。そこのところをうまく例を出して、
学生と考えていけば、理解できるのみならず、使用も可能になるというはなしです。では。