使役形と「心配」

日本語教育では使役文を他動詞と自動詞とに分けて教えられます。
他動詞文の使役文は下の②のようになります。
 
①子どもが病院へ行く。 子ども⇒
②父は子供を病院へ行かせる。父→子ども⇒
 
父というパワーで動く(行く)子どもは「が>を」に代わります。
一方、自動詞文の使役文では④のように子どもが「が>に」に代わります。
 
③子どもがにんじんを食べる。 子⇒にんじん
④父は子供ににんじんを食べさせる。父→子⇒にんじん
 
これで終われば問題はありませんが、そうはいかない。
下の⑤他動詞文の使役文⑥は非文となります。
 
⑤父は子供を心配します。父⇒子
⑥*母は父に子どもを心配させます。
⑦父は子供を心配させます。父→子⇒父
⑧父は子供を(父のことで)心配させます。
 
⑦では⑤と方向が反対になってしまいます。
父はパワーでもあり、受け手でもあります。
つまり⑧にような解釈になります。
さらに、下の⑨は⑦と同じ意味を持ちます。
 
⑨父は子どもに心配かけます。父⇒子
 
⑦と⑨は同じ意味となりますが、矢印が逆になっています。
そして、⑨を使役形にした下の⑩になると⑦と同じ矢印に戻ります。
 
⑩父は子供に心配かけさせます。父→子⇒父
 
これらの問題は「心配する」が仕手のことばなのか、受け手の言葉なのかが
曖昧なための言語現象です。