言語学

『メンタル・コーパス』を読んで

面白かったです。著者のジョン・テーラーは『認知文法のエッセンス』という本 も出していますが、これも認知文法の考えがよくわかりました。 帯にも書いてありますが、翻訳の人たちの翻訳に 「しなやかさがぴったり呼応している」という感じです。 生成文法…

『機能文法による日本語モダリティ研究』を読んで

40年ぐらい前にハリデ-という人が当時流行りだした機能という概念を使って、 英語の文法体系を作りました。 名前は「Systematic Functional Linguistics」。これを日本語の文法体系に 一生懸命にはてはめました。という本です。 モダリティはムードの下位…

動詞「◯ル」の万能性

昨日の深夜に寝ながら、発見したのですが、 「ル」ってすごいですよ。 五段動詞の一部、一段動詞の、サ変・カ変動詞の終止形は「ル」。 この「ル」は五十音のほとんどについても動詞の意味になります。 まずは、あ行 あル、 いル、 うル、 えル、 おル か行 …

『語用論研究法ガイドブック』を読んで

第1章から10章まで、◯◯語用論として、各筆者が書いてます。 第1章の総説は加藤先生で、読んでいると 先生の講義を聞いているようでした。 思い出すなあ。それから、もっと真剣に聞いとくべきだったなあと 今更ながら反省。 第5章、対照語用論。「ヘッジ…

画用論

言語学の中の一つ、語用論。 言語の解釈について研究する分野ですが、 意味論との住み分けが「取り消し可能性」だとしています。 この要領でマンガのことも研究できるのではないでしょうか。 1.音のない場面での「シ〜ン」 2.ショックをうけたときの「ガ…

四(よん、シ)

何日か前に、住民還元企画で、日本文化、日本語を教えようということで、 私は簡単な日本語の挨拶と数を教えたんです。 それで、数は7まで教えるとしたんです。4は「shi」、7は「nana」 と教えました。 理由はタイ語の4は「si」であることと7の「shichi…

無意識は意識がないか?

無理解は「理解できないこと、理解しないこと」 無意識は意識がないことか。 ①無意識に髪を触ってしまう。 女性が見つめられる、意見を言わされるなどのストレスがある場合、 自ら、髪をさわそうと意識していずに、触ることから無意識は「意識がない」と い…

使役可能形

使役形は初級後半に教えることが多いですね。 ついでに使役受身形も一緒に提示するテキストが多いですね。 1つの行為を視点を変えて見た言い方なので合点がいきます。 ①父親は子供に使いに行かせる。 ②子供は父親に使いに行かせられる。 最近、使役ができる…

書くもの

「食べ物」と「食べるもの」は大体同じ。 「入れるもの」は2つ考えられます。 ①AをBに入れる 上の場合はAもBも「もの」の対象となります。 「書くもの」がどうでしょうか。 ②書くものない? と聞かれたら、考えつくのは「紙」「鉛筆」。 それぞれ格助詞の「…

同じようで

今度/今回 同じようで… 「今度会いましょう」:会うのは次回 「今回で終わりにしましょう」:もう終わり宣言 危機/危険 同じようで… ○そこは危険ですよ ×そこは危機ですよ いい人/人がいい 同じようで… NOと言えないのは「人がいい」 「あの人、人がよす…

いや(「いいえ」の意味)、だから

人が話をするのは①相手(聞き手)に有用だから。②自分が話したいからの2つがあると思います。 ②の場合は聞き手がその情報が必要かどうかは問題になりません。 時々人と話をしていると②の人だなあと思う人がいます。 そんな人が使うマーカーが「だから」と「…

違うな?英語

1.cube 「立方体」です。でも、そうなんだけど、そうは思えません。 「C」も「U」も「E」もみんな丸っこいじゃないですか、 それに、読みも「キュウブ」ですよ。「球部」ですよ。 ぜんぜん四角くない!squareっていうのも丸っこいし。 2.How do you spell/s…

場所の「で」と「に」

中間試験で作文のチェックをしました。 作文の点数付けは非常に難しいですが、色々と 発見や再確認したいことがあふれています。 ①マレーシアにはいろいろな行事があります。 ②マレーシア?ではいろいろな行事があります。 はじめチェックをしていて②を誤文と…

あげもらいのダイクシス

AはBにCをあげる/もらう/くれる どうして3つもあるんだろう。2つでいいのにと思うこのごろです。 Bが一人称(私)がくれば 「あげる」「もらう」がつかえません。 ①Aさんは僕に本を *あげる/*もらう 厄介ですね。でも、引用文だと「くれる」がだめにな…

私を手伝う

①A:手伝いましょうか? B:私はいいから、田中さん、手伝って。 上の会話のBは「田中さん(を)手伝う」ですね。下の文は学生の発話です。 でも、どうも下の「私を手伝う」は引っかかりますね。 ②(兄は)もし問題が会ったら、すぐ私を手伝って助けたり…

並列助詞ヤ、カ、ト

宇宙戦艦ヤマトじゃありませんよ。 じゃ、始めます。下のような学習者の返答きいたことありませんか。 教師:朝ごはんは何を食べますか? 学生:??パンとご飯をたべます。 これは「ト」がおかしいんですね。「ヤ」または「カ」に変えなければなりません。 「…

「記録」「経歴」の「テイル」

L2の習得順序が明らかにされていますが、 タイトルの「テイル」もいくつか機能があり、 順序が示されています。おおかた、 ①短期の運動の持続 → ②習慣 → ③変化後の状態 そして、④「記録・経歴」と続くようです。でも、 1)??私は4年目に大学を卒業してい…

時間の範囲の「で」

①5分ばかり煮てください。 ②??5分ばかりで煮てください。 なんか、②が違いますね。でも、 ③??5分ばかり帰ってきました。 ④5分ばかりで帰ってきました。 今度は「デ」がないとおかしい。 ⑤一週間咲きます。 ⑥一週間で咲きます。 ⑤⑥は意味が違いますね。⑤…

「で」dan「が」

1.ゴミでいっぱいだ。 2.ゴミがいっぱいだ。 上の2つは同じ意味と解釈できます。 3.*ゴミでいっぱいある。 4. ゴミがいっぱいある。 上の3は非文になりますね。動詞があるからでしょうか。でも、 下の文を見ると問題なし。 5.ゴミでいっぱいにな…

動詞「防ぐ」

防ぐ」…よくない状態にならないように食い止める。(小学新国語辞典) ①事故を防ぐ(〃) 「防ぐ」対象が事故となります。上の説明の「よくない状態」=事故です。 でも、 ②子どもを犯罪から防ぐ。 これはちと違うようです。子ども=「よくない状態」ではな…

一文でできない文

日本語教育の中で初級で出てくる文型(文法形式の雛形)も 実のところ、そう簡単には一般化できないこともあります。 ①田中さんを案内する。 ②京都に案内する。 ③*田中さんを京都を案内する。 上の例文③は「二重ヲ格制限」でできない。 ④#田中さんを京都に案…

使役形と「心配」

日本語教育では使役文を他動詞と自動詞とに分けて教えられます。 他動詞文の使役文は下の②のようになります。 ①子どもが病院へ行く。 子ども⇒ ②父は子供を病院へ行かせる。父→子ども⇒ 父というパワーで動く(行く)子どもは「が>を」に代わります。 一方、…

「まで」「までに」

「まで」「までに」は持続と限界の違いと説明されています。 まあ、それで大体納得がいくのですが、動詞との関係で 学生がちょっとつまづくかもと思うことがあります。 A 3時まで/までに寝ます B ??3時まで/3時までに起きます Aでは、「寝ます」は持続…

無標と有標

Aこれは本です。 Bこれが本です。 通常、Aが無標でBが有標になると思います。 しかし、文脈があると、それにしたがって無標か有標に分かれます。 つまり、言語形式、文脈それぞれに標識がことなるということになり、 下で示した4通りがあります。 言語形…

否定

最近、否定に関する本が出て、読みたいなあと思ってるんですけど、 目の前の問題の本が多く、読めません。残念。 RVRでマラドーナの話をしていたんですが、 そこでのマラドーナのコメントに対するRさんの言葉がフォーカスでした。 話はこうです。 W杯でマラ…

できる、できない

一般的に年齢が増すごとに語学の習得が悪くなるといいます。 でも、専門家はこれを否定するか、あやふやな言い方をしています。 どうしてでしょう?自分がその年齢(いわゆる老人)のたぐいに入っているからでしょうか。 でもですね。よく考えると、そんなに…

タイ語とマレー語

タイ語は中国語と同じように声調がありますが、マレー語には日本語と同じように 声調はありません。でも、 隣の国だけあって言葉がちかいところもありますなあ。 日本語:言葉 タイ語:パーサー マレー:バハサ 日本語:教師 タイ語:グル マレー:グル まあ…

ナイはアル

①ありません この文はわかるようで実はわかりません。「何が?」がわからないからです。 ②本がありません この文も実はわかりません。「どこに?」がわからないからです。 文脈がないと、動詞や形容詞はそれだけでは存在できないということです。 例えば、「…

ルとタとテイル

『自然な日本語を教えるために』(ひつじ書房)、読んでます。 テンスとアスペクトの概念ではなく、話者の「見え」と刺激に対しての処理の違いで 「ル」「タ」「テイル」を説明しています。 「ル」は「既に出来(しゅったい)して、眼前に存在や状態が認知さ…

処理か保持か

ワーキング・メモリ(WM)って知ってますよね。 一時期、短期記憶と長期記憶に分けていたんですが、 でもそれじゃあ、処理(理解過程)はどうなるのってことで 上の2つじゃあ静的過ぎるんじゃない、って意見が出ました。 そこでWMの概念が登場。このWMで「…