旅恥15

眺めのいいレストランに入った。痩せた夫婦が経営している小さいところだ。道はずれのレストランだからか客はだれもいなかった。

 ビンタンビールを一本。いつ飲んでもおいしいビールだ。

 2本目を注文した時つまみが欲しくなった。ついでにマジックマッシュルームを食べてみようと思い、あるのか聞いてみた。痩せた夫はないと言ったが、妻の方が夫に何か言って夫は困った顔をしながらアルと言った。

 夫はバイクを走らせ出て行った。マッシュルームを採りにいったのだろう。間もなくビニール袋に入れて持ってきた。僕はまだ見たことがないので見せてもらった。どこにでもあるマイタケのようなものだった。

 食べ方はオムレツにして食べるのが無標(普通)のようだ。二人前注文した。3本目を飲みながらマッシュルーム入りオムレツをたいらげた。マッシュルームは無味無臭だった。オムレツはまあまあだった。

 食べてから30分ぐらいで幻覚が見えてくるらしいが何も起こらなかった。もしかして本物のマイタケだったかもしれないと思い帰ることにした。夫がだましたか、間違えたのだろう。

 帰り道、頭がクラクラしてきた。ビールの飲みすぎではない。吐き気もしなければ首から下は元気だからである。走ることもできたがコントロールが効かない。仕方ないので途中のレストランで休ませてもらうことにした。効いてきたのか?

 頭がボーッとしている。壁に飾ってある馬のタペストリーを見ていた。急に馬がタペストリーから飛び出してきた。ぶつかるかと思い除けようとした。が、それは幻覚だった。誰かに見られたかと見渡したが誰にも見られていなかった。バカげた幻覚だったので笑ってしまった。一人でニヒニヒと。

 ドラッグで一人でニヒニヒと笑っているのはこういうことなのだとわかった。これ以上幻覚を見るようだとここにいてはいけないと考えフラフラと宿に戻った。部屋のなかでは壁もベッドも天井もみんな笑っていた。大笑いしていた。

そして僕もニヒニヒ笑った。