旅恥18

 ニアス島へはスマトラの南から船が出ている。夕方頃出発し、朝6時ごろの到着となる。

 乗船券は1等、2等に分かれており1等はリクライニング付きの座席でクーラーのきいている部屋でテレビが見られる。2等は屋根だけ付いたところに2段ベッド様なものが並んでいて1m×2mの幅に区切られていて、そこがひとり分となる。

 一応、1等席にしたがずっと座っていくのが苦痛だったので2等のほうがいいと思えるが、実際2等は潮風に吹きさらしになるので2時間もいると体がベトベトしてくる。

 だから2等のほうは生活のアシとしてこの船を使っている人で、1等は中流階級か商人が多い。僕はバカンスに来ている家族連れの近くに座った。

 その中の高校生ほどの女の子が話しかけてきた。質問は相変わらずのもので来た来たと思った。いつもの結婚はしているかの質問に答えると家族ぐるみで相談が始まった。

 父親は英語が話せないので娘が訳した。

 Q:インドネシア人と結婚するとしたらどう思うか。
 Q:お前はお金持ちか。
 Q:うちの娘をどう思うか。
 Q:うちの娘を幸せにさせられるか。

 等など、答えなければならなかった。僕はもし結婚してもムスリムイスラム教徒)になる気などないときっぱり言うと父親は残念がっていた。娘もそれ以来話しかけてこなくなった。

 船内スタッフの若い男がこの娘に気があるらしくちょっかいをかけてくる。娘も悪い気がしないらしくそれに受け答えしている。僕はその気はなかったがなぜだかちょっと寂しかった。

 ビールを飲んでさっさと寝てしまおうと思ったがクーラーの効きすぎで寒くて寝られなかった。体を温めるために甲板に出た。波しぶきが顔に当たり気持ちが良かった。

 タイタニックを思い出し、先頭に出て手を広げてみた。わびしくなり戻ろうとすると少年がずっとこっちを見ていた。かっこわるーー