旅恥 終わりに

 アジアを廻っていると時々場違いなものに遭遇する。タイの電気もまともに通ってない小さな島に行った時、「ゴルゴ13」が全巻置いてあった。このマンガはどうしたのかと宿のマスターに聞いたら日本人が置いていったと言う。それも違う日本人が置いていったそうだ。

 一人目が「ゴルゴ13」数巻置いていってそれを読んだ日本人が律儀にも残りの数十冊を持ってきたそうだ。

 どうして「ゴルゴ13」なのかと疑問を持つ?シンハービールを飲みながら読み始める。マンガを読み進めながらビールもすすむ。なかなか面白い。そしておいしい。

 「ゴルゴ13」は政治や経済の話が多い。この内容に全く縁遠いタイの小さい島で読んでいるとまるでおとぎ話を読んでいるようで気持ちがよい。昼は太陽の下で、夜はランプのともし火で。完読しなければならない(?)ので一泊多く泊ってしまった次第である。

 また日本人用の育児解説本もあった。何のために?それも男が置いていったそうだ。海外にずっと住んでいると活字飢餓症になる。なんでもいいから活字を読みたくなる。

 1ヶ月ぐらい前の新聞が手に入るようなものならスミからスミまで舐めるようにして読む。通常は読まない死亡蘭も丁寧に読む。田中フミさん98歳死亡。天寿をまっとうしたなと目がしらが熱くなる。下の方にある旅館の広告などあればゆっくり温泉につかって、日本食を堪能している自分がいる。帰国するまでつぶれないでいてくれ、不況に負けるなと応援したくなる。

 話がそれたが、そういうことで活字飢餓症の日本人未婚IT企業タイ支部勤務男性伊藤貞夫血液型AB型は育児解説本に手を出したのだろう。そして貞夫はふと気が付いた。むさぼるように読んでいるこの本は女性用なのではと。でも待てよ。もしかしてこれは神からの啓示かも。そうして貞夫は新しい第一歩を踏み出すこととなった。このタイの小さな島で。

 また話がそれたが、一番驚いたものは富山の置き薬の代表格「ムヒ」があったことである。「ムヒ」は虫刺されのときに塗る軟膏で僕は小さい頃から愛用していた。どうしても使いたかったので蚊がいるような場所を選んで歩いた。こういう時にかぎって刺されないものである。このときほど蚊にあこがれたことは無かった。Come back,蚊! 

 ということで無理やりここで終了します。それではまた。