電車の中や居酒屋、ラーメン屋で交わされているなにげない会話におもしろい現象がいっぱい詰まっている。
確かにあるが、認知されていない言語現象を発見した喜びは中学生の頃エロ本を買って家に帰るトキメキに非常に近い(?)。
この間発見したのは名詞の省略である。
A:電車男は来週が最終回だね?
B:φ(名詞省略のマーク)ですね。
上の会話でのBは「そう」が抜けている。また「はい」だけでもかまわないはずだ。
C:牛肉はもう値段下がんないね
D:φ かね。
上のDも「そう」が抜けている。BもDも助動詞のみの発話となっている。通常、助動詞は動詞を「助」けると書くように単独では現れないことに文法上はなっている。また、
E:出身はどこ?
F:φ は 富山です。
上のFの返答「は」はつけなくてもいい発話であるが、よく聞かれる返答の仕方である。言語学ではただ発見しただけではダメで説明(「記述」するという)しなければ意味がない。
BとDはともに助動詞のあとに終助詞「ネ」が付いている。「ネ」は何かに一致させようとする働き(機能)があり、BもDも話し相手に一致させようとする意識があることがわかる。
つまりひとつの話題を二人で作っていく共話とよばれる会話である。Bがただ「はい」と言ったり「そうですね」と言って話し手と聞き手に分けるより相手の発話部分を引き継ぐ形式をとることにより「共に話を作っていく」といえる。
Fの「は」もなくてもよいが、話し手、聞き手という対立関係ではなく、Eの発話「どこ?」の部分に当てはめるようにして文を作り上げているためそのマークとして「は」が付けられている。
一般のひとはこんなこと聞いても「ふーん、それで?」となる。なんの役にも立たないからだ。そのこともエロ本持ち帰りの話とよく似ているなあ…。