TrainTrain

 姉から父の病状を知り帰国した。ずっと家を離れていたので家族の穴の開いたよう感覚はまったくなかった。

 急に帰国して父が怪しむかとも思ったが、ベッドの脇に座っていた僕を見つけ、
 
 帰ってきたか。早く仕事探せ

と言っただけだった。日に日に父の病状が悪化していった。そして夜中亡くなった。

 親戚がみんな集まった。親戚に気を使うのはイヤだったが、子どものころは「親戚が集まる」イコール「祭り」だったのでその時の気分を思い出した。しかし現在までの僕のことを根堀り葉掘り聞かれるのには参った。

 父は釣りが好きで釣り仲間も集まった。彼らは僕にはほとんど関心がなく僕の知らない父の話を永遠としていた。とても面白く不思議だった。

 自分が死んだときはこのような友人がいると「死にがい」があると思った。僕は釣りはやらなかったので釣道具一式を釣り仲間みんなに配った。釣道具というものは嗜好が違うのでもらっても使わないことが多いがみんなよろこんでくれた。

 このあいだ父の一番の友人が亡くなった。葬式には釣り仲間もみんな来ていた。そこでもその人の釣り話が始まっていた。男の世界ってやっぱりいいなと感じた。

 野球部にいた僕の友人の命日には必ず彼の墓に「スーパードライ」が置いてある。そして次の週ぐらいに集まって飲み明かす。

 最後はカラオケに行って毎年同じ歌を全員で歌う。ほとんどのものが酔いも手伝って泣いている。「トレイン・トレイン」だ。

 トレインはすぐに走り去るが「トレイン・トレイン」は毎年毎年僕らの前に姿を現す。