仮説の証明-前

 これは事件か事故かが判断できず、ただ自殺として肉親に伝えられたものである。

 T・Sは、普通の大学生活を送り、そのまま同じ大学で大学院に進んだ。彼の研究は脳の研究である。ご存知かと思うが脳の研究が始まってそれほどの年月が経ったわけではなく、未知の部分がほとんどである。

 T・Sは、脳と筋肉の関係について、包摂されるVPにおけるニューロンのクリック反応によりVPカロンに変化するというジェームス・チン京大博士の説から一歩進んだ仮説の証明に取り組んでいた。

 初夏6月に入る頃、T・Sは担当教官の研究室に息を切らせて入ってきた。仮説が証明されたと。担当教官のA・Mは実際のところT・Sの説明がさっぱりわからなかった。そこで所々の誤謬を指摘しただけにとどめた。

 隣の研究室にいた院生のY・Mは、T・Sの鳴くような怒鳴り声がA・Mの研究室から聞こえたという。

 それからT・Sはずっと院生に与えられている狭いほうの研究室に閉じこもったままになった。その部屋には文献等も置いてあるため学部生が入っていくとT・Sは窓からソトを見上げていたという証言がある。

 T・SがA・Mの研究室を罵声をあびせて出て行ってから約2ヶ月後だった。T・Sの死体が図書館近くで見つかった。図書館は院生の7Fの研究室から40mぐらい離れてる。

 警察はその夜図書館前で涼んでいた女子学生が7Fから人が飛び降りるのを見たという証言を得た。

 しかし、不可解な点が見受けられた。が、それは次回に。