影の内3

 金谷は疲れていた。もうどうでもよいと思った。大下の部下たち、通称バラシヤにかかることは、蜘蛛につかまった昆虫とおなじである。

 任意から取調べに移ってから2日目の朝、宮田は警視庁特別取調室別室に向かう。

 宮田は直接迫田に電話をしてもつながらない。会議だという。しかたがなく、大下に会い金谷のアリバイを伝える。

 その時はすでに金谷は供述を始めている最中であった。大下の部下たちによる作られた供述である。

 宮田はそれ以来、金谷夫妻と付き合うようになる。真犯人の確定も金谷夫妻との何気ない会話から浮かび上がる。

 翌日の新聞に「誤認逮捕」との記事が載る。宮田の動きを察知したのか迫田はすぐさまこの事件からプロスポーツ選手殺人事件のほうに移動するよう申請し、許可されていた。

 記者会見は山内が担当したが、山内はなんと言ったらいいかわからず、記者からの不満の声があがった。

 まあ、この会見に迫田が出たとしても同じようなものであったろう。

 プロスポーツ選手殺人事件から幼児誘拐殺人事件に移された山内は尻拭いをさせられたようにみえる。

 しかし、そうではなかった。実は事件の当初は自分をこの事件の担当にしてくれと申請していたのであった。山内はあまり出世には興味がなく、事件に没頭することが彼の生きがいであった。

 彼には水口という部下がいる。この水口はこの事件の被害者の妻s子の弟である。