サブロウセブン

 日本に来られただけでもいいのかもしれない。でも、こんな所だとは思わなかった。

 国にいるときはもっと発展した国だと聞いていたが、たいしたことなかった。

 まあ、アルバイトの自給は半端じゃないほどいいけど…でも、こんな狭いアパートで、トイレもシャワーもないアパートで何年も暮らしていけるのかどうか。

 最近、学校も休みがちになった。我国はストレスという言葉も概念もないが、この国はどうしてこう疲れるのだろう。

 みんな疲れている。午前中は日本語学校、午後は1時間補習、アパートに帰って3時間仮眠してアルバイトへ。みんなみんな同じ、いつもいつも同じ。

 そろそろバイトに行かなきゃ。店長は1分遅れても文句を言う。我国人が嫌いなのだ。戦争に負けたこと、まだ恨んでいるのか。

 眠い目をこすって自転車に乗る。我国の人は自転車など乗らない。下層の人が乗るものだ。でも、オレもここでは下層か。

 だんだん店が近づいてくる。今日行くの辞めようかな。でも、バイトしないと生活に困る。店が見えた。やらなきゃいけないな。

 店の裏に自転車を止めたとき。ゴミ置き場に汚い犬が残飯をあさっていた。追い払おうと思った。でも、こいつもこれで生きてんだよな。今日はオレの掃除当番じゃないし食わしてやるか。

 食ってていいよ。と声をかけた。汚い犬はこちらを向いた。まずいところ見られたなあという顔をして、頭を下げて出て行った。

 あいつも日本人だなあ。って、日本犬か? 

 さあ、バイト、バイト!