カラクサの憂鬱

ラクサはここに来る前のことはほとんど覚えていない。今ではここのボスであるが、自分からなろうとしたのではない。ただ、自分を守ろうとしただけだ。

 めちゃくちゃ弱いが、喧嘩っぱやい手下のルドと、まだ幼いメスのジョムジェンと一緒に住んでいる。

 一応、この学舎にはイギリス人の先生、トーラスさんがペットのスマートを毎日学舎につれてくるが、カラクサたちは何の興味も抱いていない。

 しかし、かれはカラクサたちに興味津々である。エリートのスマートが何で雑種のカラクサたちに興味を持つのか、サッパリである。メスのジョムジェンだけが違う意味で、時々スマートを見ているときがある。

 手下のルドは2年前に喧嘩をふっかけて、簡単に負けてしまった。それから、ルドはスマートを見ても無視している。

 そういえば、2週間前、カラクサが指定の場所で昼寝をしている間、QMビルの3匹、通称汚い三流星がこの学舎に奇襲を掛けたことがあった。何と3階までの学舎の2階にまで上ってきたのである。この学舎では犬はどこへ行ってもいいことになっている。教室、研究室どこでもフリーである。

 ただし、その暗黙の了解が他の犬たちには通じなかったようである。実は汚い三流星を追い出したのはカラクサたちではなく、そうじのおばさんたちであり、常駐の警備員タンさんたちである。

 コトが済んでから、タンさんが話してくれた。本当はカラクサがやらなきゃならなかったという目でルドがカラクサを見ていた。

 なぜか怒りがこみ上げてきたカラクサがルドをコテンパにやっつけたのは言うまでもない。