カラクサの憂鬱(ルドの場合)

 手下のルドにだって悩みはある。いつもカラクサにコビを売り、ジョムジェンにはオスとしてみてもらっていないし、スマートには会いたくないし…

 でも、一番の悩みはシッポがないこと。ルドがこの学舎をネドコにしていないころ、大学そばにある川のふもとに住んでいた、兄のドルジェと一緒に。兄のドルジェは常に前を行くタイプで、進んで縄張りを拡張していった。

 一時期などは8匹もの手下をかかえていた。ルドもドルジェの弟だということで一目置かれていた。この当時のルドはというと非常におとなしく、目立たない性格であった。それでも時々ドルジェは戦いの先陣をルドに任せた。

 おびえるルド。しかし、手下の前である。シッポを巻いて戻るわけには行かない。いざとなればドルジェが手助けに来てくれる。黒毛のピーの縄張りへ突っ走っていく。ルドの姿を見たピーの手下が一斉の吼えまわる。

 それを聞きつけた手下どもが徒党を組んでルドに迫っていく。その数何と15匹。コレじゃ相手にならない。15匹を前にうなりながらルドは考える。引くべきか、進むべきか。引くべし。一目散に後退するが、手下に追いつかれてしまった。

 その後は全然覚えていない。気がついたときは体中が痛くて動けなかった。ドルジェの親衛隊隊長カツがルドのそばにより、一言言った。ドルジェは死んだよ。

 どうして死んだかはわからない。ドルジェの縄張り、そして黒毛のピーの縄張りはカツのものとなった。カツはドルジェは勇敢な死をとげたと言っていたが、この期を待っていたとも噂された。

 眉間のキズとシッポはこのときの不の土産となった。傷が治り、ルドはこの地を離れた。それから、数ヶ月は定住を求めさまよった。ルドが4歳のときである。