旅恥1

 以下は、10数年前に行ったインドネシア体験談です。一回ごとに読みきりになっています。時々入れて行きます。

 
 マレーシアに住んでいるころ祭日になれば旅をしていた。ちょうどチャイニーズ・ニューイヤーだったのでインドネシアスマトラ島に行くことにした。
 
 マレーシアのペナン島からフェリーが出ているのでそれに乗ることにした。出発が昼ごろだがなかなか乗船許可が下りない。一時間待ってもなんの音沙汰もないので聞いてみると波が荒いので危険だということである。待合室から見る海は静かで問題ないようにみえるが、そこはマッラカ海峡のそばにあたる海である。素人にはわからない危険があるかもしれない。恐るべし。
 
 2時間後やっと埠頭で待っていろというお達しがきた。すぐに乗れるものだと思ったのもつかの間。メダンからのフェリーが着いていない。炎天下の埠頭で3時間待たされた。ここは日本ではない。怒ってはいけない。ここは南国、ゆったりとゆったりと。
 
 やっとフェリーが来たがすぐに乗船させてくれない。船上点検と掃除だそうである。しかしだれも点検している人もいないし掃除している人さえいない。船員は埠頭に着くなりレストランのほうに行ってしまった。ここは南国,落ち着いて落ち着いて。
 
 結局フェリーが着いてから2時間後、本当の出発時間から7時間後の出発である。だれも文句を言わない。これこそ南国である。というかみんな待ち疲れで文句を言う気力もないのだろう。

 船内は思いのほか快適である。冷房が効いていて座席も広い。ビデオ放映もある。旅行につきものの騒ぐガキもいない。ビールを飲んでいるうちに疲れがたまっていたのか寝入ってしまった。ビールとフェリーのゆれが幸福の安眠にいざなってくれた。この時点ではメダンで悲惨なことが起ころうとは知る由もなかった    -つづく-