大井川の流れ星 上

仕事はうまくいっていた。
 
あまりにも稼働率があがったため、本社の方でも
なぜ?という声があがっていた。
あがるはずのない稼動があがる。簡単だ。
常に満室にすればいい。どのホテルでも
1,2室はダブルブッキング対応に残しておくものだ。
しかし、それをやらない。売れるだけ売る。それだけ。
ボクが辞めることになってもう70室新設することに決まった。
仕事が面白くないわけではないが、このまま終わるのはちょっと違うと思っていた。
 
仕事場であるホテルへはいつも自転車で通った。途中には大井川がある。
 
 箱根八里は馬でも越すが、越すに越せない大井川
 
毎日越してる。馬より強いことになる。さすが大井川、風が強いと自転車をこいで渡るのは
一苦労する。冬の風は目を開けていられない。
 
夏の夜の大井川。車の通りも少なくなり、川の流れのようにゆったりと自転車をこぐ。
民家の光も少なく、人など見たくないときには自転車を降りて、川をぼっーーと眺める。
あまりにも車の通りが少ないので、通っていく車がボクを自殺するのではないかと、
その歩足を緩める。チェ!