無垢の人

 僕が通っていた小学校は男子、女子が同じトイレだった。6年のとき、体育館の新設にともないトイレが作られた。そのトイレは男女別々だった。みんな不思議がった、どうしてべつべつなのかと。なんか気持ち悪くて入れないという者までいた。

 そんな小学校でもプールはあった。だが更衣所がなかった。小学4年だった僕たちは当たり前のように男女同じ教室で着替えた。そこでハリキるやつらがいた。伊藤と稲垣だ。彼らはクラス男子の陰ながらの意向を受けてある使命を行うのだ。

 クラスに必ずいるのはマドンナ的存在の女子である。当然僕らのクラスにもいた。彼女はずば抜けて頭が良かった。50問の計算をさせられたときがあった。僕はまだ半分も解けていないとき彼女は颯爽と50問の試験を終えていた。わずか15分である。

 クラス男子の願いは彼女の水着に着替える瞬間の伊藤と稲垣の行為である。その他の女子はターゲットから外れているのですぐに着替え、さっさとプールに向かう。狙われている彼女は警戒し、なかなか着替えられない。着替えを終えた女子が一人ひとりといなくなる。

 結局、彼女一人になったとき伊藤と稲垣は行動に移す。彼らコンビはいきがぴったり。彼女の身体をおおっているバスタオルを二人ががりで剥ぎ取ってしまう。そうすると真っ白な彼女の身体があらわになる。

 言っておくがスケベとかエッチとかとは全く別物である。純粋に、単純で崇高な感覚である。ある意味、儀式かもしれない。彼女のバスタオルが剥ぎ取られる瞬間、男子からオーということばがもれる。夏になると毎回行われる行事である。

 僕らが6年のときに男女別々の更衣室ができた。だから今ではもうそんなことはやっていないだろう。でも今そんなことやったら親 呼び出されるんだろうなあ。