海のホタル2
静岡の清水から母に電話があり叔父がいなくなったことを聞いていた。その叔父が今ここにいる。
ホタルイカがいるって聞いたから来たけど…いねーな
もう時期が終わってるよ
醤油買わなくて良かったね 女が叔父に言った。獲ってすぐ食べるつもりだったのか紙皿まで用意していた。
義男、大きくなったな ああ、これミキ 思い出したように。
よろしくう。 髪を染めているがまだ高校生ぐらいにみえた。
どうも
じゃあ 今日泊めてもらうわ いいだろ
うん、多分
車、乗ってけよ やはり赤の外車は叔父の車だった。
僕は自転車を乗ってきたので車で先に行ってもらうことにした。
家に着いたらもう家の前に赤の車が停まっていて、学校帰りの小学生が車の周りに集まっていた。ここらではめったに外車など見る機会がなかった。
叔父たちはすでに家に入っていた。母が帰ってくるまで居間で待ってもらった。特に話すことなどなかったので僕は自分の部屋で受験勉強することにした。
少しすると叔父が部屋に入ってきた。
勉強してるのか?
うん
そうか、大人になったら何になるんだ?
わからん
この質問は小さい頃祖母の葬式で静岡に行ったときにも叔母に聞かれた。
叔母は今頃なにをしているか聞きたかったが聞けなかった。
オレはお前ぐらいのときは「走り屋」になりたかったけどな…
それ、仕事?
違うけどな ハハ
一人でいると不安なのかミキも入ってきた。ミキは入るなりベッドに意気よいよく飛び込んだ。ベッドのはじに座っていた叔父はその反動でベッドから落ちそうになった。
義男くん、一緒に寝よ。 うつぶせになってこっちを見ていた。
バカ、義男は勉強してんだよ。 おめーとは違うんだよ。 叔父はミキに言った。
勉強なんかつまんないよ
勉強しないとオレみたくなるんだよ
いいじゃん、まさちゃんみたくなるんなら
だめだよ、オレみたいの
まさちゃん、すてきだよ あたしを守ってくれるじゃん
小さい頃に叔母に言われた言葉と同じだった。大人になったら女性を守る男になれと。そういえばミキは叔母の面影に似ていた。