母が帰ってきた。叔父を見て一瞬笑ったがすぐ真顔になった。
どうして?
え?
なんでいるの?
ちょっとホタルイカを…
ミキが笑った。
バカ 姉ちゃんに電話するよ
うん… 叔父が自分の手を見た。
叔父は上の伯母が強いこともあって口は悪いが気がやさしい。母は叔父に対しては優しいので富山に来たのだろう。
これからどうするの?
上の姉ちゃんがうるさくて…
あんたのこと思ってるからじゃん
……
えっと ミキさんって言ったっけ
はい ミキが真面目な顔になった。
高校は出たほうがいいんじゃない
親もそうは言っているんだけど…
ミキは出た方がいいよ 叔父が言った。
叔父は中卒である。僕の家系はみんなそうだ。家業を継ぐのに勉学はいらない。任侠さえあればいいと先代が言ったらしい。だから母は無理にでも姉を高校にやり僕にも行かせようとしている。
今日一泊したら出て行くよ
それはいいんだけど…あんた これからどうすんの
家は継ぎたくないし、まともな仕事できそうにないし…
ミキさん幸せにするなら働かないと 母はミキを見た。
清水離れてどこかで腰を落ち着けるよ
ミキさんのご両親には言ったの
ミキんち 親父が公務員だから家の家系わかったら認めてくれないよ
父が帰ってきた。ちょっと頭を下げて奥に行った。父は叔父に似て気は優しいが社交的ではないので客がいると自分の部屋に引っ込んでしまう。
でも行くしかないじゃん それからよ そう言って母は夕食の支度をしに行った。
夕食が済んだ。夕食中なにも喋らなかった父が叔父に、夜になるとホタルイカが身投げするから見に行きませんかと言った。ミキさんもどう?
父はそう言って支度をしだした。父と叔父、ミキとそれからボクも付き合わされた。どうして僕が行かなきゃなんないの?と母に言ったら、お父さん一人じゃなんでしょう。なんでしょうって何?母はにや笑いをした。
ミキも行くのでついて行くことにした。