「ネ」のことⅡ

 ネがなかったら会話は非常にぎこちないものになる。日本語学習者の日本語のようにカクカクしたターン(会話交替)になる。

 1、A:今日はいい天気です
   B:そうです
お前たちはロボットかというような会話になる。また、ネの誤用はカチンと来るものがある。

 2、A:今何時ですか。
   B:えーと、3時ですね
   A:そうですネ
知ってるのなら聞くなと言いたくなる。こういう間違いは日本語学習者に頻繁に見られる(まー、我々日本語教師がちゃんと教えていないのが原因ですが…)。

 上の2Bの会話をもう一度見られたい(論文的)。Aの知らない情報なのにネを付けている。この例からも聞き手との排他的情報の量とは関係ないことがわかる。

 Bの行動を想像すると「えーと」で腕時計等を眺めているのだろう。つまり間接的情報としての発話となる。その情報に頼った行為をネで表していると考えられる。

何かに頼ることや頼ることができることを明示するのがネの機能とするとどうだろうか。

 3、〔違うものを選ぼうとしている人に〕それ、違いますネ/ヨ
ヨとネは反対方向の指向だとしている学者は多いが、(3)の説明ができないのがわかる。ネは発話情報の依拠するところがあるのを明示し、ヨは情報の提示ということになる。

 では、「いい天気ですネ」はどう考えればいいか。ネの何かに頼るサインは情報のみではなく会話相手に対しても用いられうる。そのようなサインが相手と心を一致させるというサインであると思われたのである。

 4、〔取調室で〕犯人:知らないネ
上の例では完全に聞き手である捜査官をバカにしている。そう感じるのは簡単に答えることができるのに間接的であるネを使ったことでトボケテいるように思われるからである。