或る日常Ⅷ

 朝10時頃、下の階がうるさいので目が覚めた。ユウヤがまた騒いでいるようだ。家は広いが隙間だらけなので矢鱈とよく声が通る。

 おじちゃん、まだ起きてこん と母である姉に言っている。
僕はせっかくの休みなので昼まで寝ていた。昼頃腹が減ったので下に下りた。ユウヤは僕を見つけ、開口一番、

 メリーツカレマス
 あっ、どうも   ユウヤは不満げな顔をして、もう一度

 メリークレソマス
 メリ-ク・リ・ス・マス 言い直してやる

保育園で覚えたのだろう。人に会うと、このコトバを言う。これを言うためにずっと僕の起きてくるのを待ってたのか。

 メリークリスマスって何? と聞く
 サンタさん
 サンタさんって何?
 クリスマス
 クリスマスって何?
 メリークリスマス と堂々巡りの質問となる。

 本当に「メリーツカレマス」になるので質問を止める。僕はこの頃(そんなに昔ではない)はあまりクリスマスでは騒がなかったと記憶している。そして、サンタクロースが本当にいるとは思っていなかった、またはいてもこんな田舎には来ないと思っていた。

 今のご時世、サンタクロースが本当にいるように信じ込ませることがその子にとって一番であるという前提があるようだ。夢があっていいではないかという。そこにある夢ってなんだろう。

 ただ、子どもにとってオモチャがもらえる日であり、大人にとって…。

 でもこの寒い地方都市でイベントのヒトツもあった方がいいかと、近所でもらってきた餅を食べながら思う。