監督の言

 0-0のまま8回裏、1アウトランナー二塁、バッターは6番サトシ。これでサトシの3回目の打席。一回目はセンターに向けるヒット、2回目はフォアボール。

 監督のサインはスクイズバント。サトシは迷った。自分ならこの座席もセンターに返せるのに…。内野守備も当然バンドで来るという守備体型だ。サードとファーストはかなり前に来ている。キャッチャーは通常より腰を上げている。

 ピッチャー第一球。おっと、サトシかなり高めの球に喰いつくようにふり空振り。内野は驚き、サード、ファーストは地面にひざをつけて後向。完全に戸惑った様子。

 監督の顔を見る。思ったとおり苦虫顔。

 次のサインもバント。サトシは迷った。今度こそセンターに返せるのに…

 内野はキャッチャーを含めこのバッターの予測ができない。ピッチャー振りかぶる。

 通常高校ではバンドはピッチャーが振りかぶると同時にバントの姿勢をとる。しかしサトシはしない。まだ迷っていた。内野は完全に後退守備。サトシの一回目のセンター前ヒットが脳裏に焼きついている。

 サトシはピッチャーの片足が着くと同時にバントの構え。内野またまた裏をとられる。マシンに当てた球はサード方向3mの距離。セカンドランナーはすでにサードへ。あせったサードはファーストへ悪球。

 サードランナーそのまま生還。

 この試合、サトシの高校のものとなる。終了後、お決まりのアイサツをし、ミーティングとなる。

 監督はベテラン中のベテラン監督。彼はサトシに言った。

                       -終わり-