狸の墓

ギャーという鳥の鳴き声で目が覚めた。まだほんのり暗かった。4時半だった。

 二度寝しようとしたができなかったので、散歩することにした。少し肌寒かった。

 こういう日に一度ドイ山に登ってみたかった。山というよりも丘といったほうが正しく、新緑に包まれたドイ山で新鮮な空気を吸いたいと思った。

 街をぬけると緩やかな坂道がクネクネと続いた。まだ5時前なのに街の中はたくさんの年寄りが徘徊していたが、さすがに坂道の方は誰も歩いていなかった。

 アスファルトから砂利道に変わる所で狸が車に引かれたのか、死んでいた。こんなに近くで狸を見るのは初めてだった、ましてや死んだやつ。

 そこから10分ほど歩いていると何やら機械音のような規則正しい音が聞こえてきた。

 山頂付近には電気塔がいくつかあるので漏電でもしているのか。坂道を上がれば上がるほどその音は大きくなっていった。

 鬱蒼と茂る木々の間からオレンジ色の光が見えてきた。工事でもしているのかと覗いてみると大きな石が組まれていて、その上に工事現場の夜光筒がさしてあった。

 そして数匹の狸が回りを囲んでいた。組まれた石のところに食べ物でもあるのだろうか。狸たちはお互い話でもするように鼻先をくっつけあっていた。

 しばらくすると一匹の狸が後ろを振り返った。さーっと何かを引きずる音がしたからだ。体の非常に大きい狸が砂利道で死んでいた狸を引きずってきたのであった。

 大きな狸は石の組まれた所まで引きずり、他の狸とそうでで死んだ狸を石組みに押し込んだ。

 時間が止まった。

 違う石で蓋を閉めると、数秒間狸たちはその石組みを見上げ、おもむろにてんでに去っていった。

 一匹だけずっとその石組みを見上げ続けている、体の小さな狸がいた。