コートダジュールの意味

 住み始めた頃はいろいろとやっかいなこともあったけど住めば都である。

 隣の住人も人付き合いが嫌いらしく助かっている。

 近くにコンビニもあるし、弁当屋もある。問題はない。

 昔のこと、忘れられそうだ。

 今日は会社を休んで海へでも出かけようか。

 ケータイがなっている。出たくない。

 シャワーを浴びて自分の顔を見る。死んでいるヒトのようだ。近くで犬が鳴いている。

 空に浮かぶ雲は何を考えているのだろうか。流れていく。南へ。

 あれは?

 事務所の隣の会議室兼部長室から怒鳴り声が聞こえた。また部長がほえている。クビにするならいつでもやめてやる。気の弱い潮野課長代理は「まあ、そうおっしゃらずに。彼も彼で一生懸命やってますよ」と。


 夕方頃の海。ちょっと肌寒い。彼女は何を待っているのか。ボクはそのこと知っているような知らないような。何も言えないでいる。「気持ちいいね」「…ウン」

 タクシーのお金あるかな。雨の中を走り抜ける。車内は湿度が非常に高いが、海の近くで育ったので脳とは関係がなく、体が弛緩している。

 プールのアメンボウの気分である。