タイの「BのA」

 日本語を外国語として習う(JFL)学習者は、日本で日本語を習う(JSL)のような豊富な日本語のインプットがないため、教科書どおりの日本語を話すかに見える。しかし、どうもちがうようである。

 大学2年生53人に非公式のOPIをしてみたところ、日本語教師が特に注意を払って教えたことが、あるレベルでは使えないことがわかった。

 OPIの初級は単語レベルの話者である。このレベルに見られる特徴として「ノ」の所有格が逆転していることである。例えば、(1)のような間違いである。「デ」と「ニ」の間違いは中級話者(文レベルの発話)にも見られるが、この間違いは誤解を受けることはない。

 1)前の大学に 会います  →大学の前で待ちます

 しかし、「前の大学」と「大学の前」は全く意味が違う。タイ学習者の発話に「BのA」が出たら、ほぼ初級学習者と見てよいように思われる。中級話者で「BのA」が出たのは2人のみである。

 それでは、中級レベルの学習者が完全に「BのA」を言わないのかというとそうでもない。中-下の話者は自分の「BのA」の発話を訂正し、「AのB」が言えるのである。

 中級-中になると「BのA」は姿が消えるのが分かった。「BのA」の出現で初級と中級-下と中級-中がある程度見えてくる。