推論ゲーム

 1)田中さんが来たら、出発しよう

 上の文は「田中さんが来なかったら、出発しない」という意味にもなる。これを誘導推論という。それで、鈴木さんは田中さんが来ないのでちょっとコンビニに行った。その間にみんな出発してしまった。どうして?

 上の(1)は発話時に作られた条件で、実は「10時になったら、出発する」という前提があったと考えると解決する。つまり、

 2)今、9時50分だけど、10時前に田中さんが来たら、その時出発しよう

 という文が出来上がる。そして10時になっても田中さんが来なかったので出発したのである。

 3)Aがメンバーに加わったのを知っていたら、そのライブに行っていた。

 上の例文は反事仮想というもので前件が偽である。意味は「Aがメンバーに加わったのを知らなかったから、そのライブに行かなかった」と同じになる。後件も偽になる。後件を真にすることもできるが、どうもこじつけたような解釈になる。

 4)Aがメンバーに加わったのを知っていたら、(もちろん、それを知らなくても)ライブに行った。

 上のようにすると後件が真になる。

 通常は発話の意図を解釈するだけでそれ以上は推測しないが、解釈と現実世界に矛盾が起こると発話を深く推論しなければならなくなる。

 典型的な解釈は情報をいち早くつかむのに適しているだけではなく、認知消費(コスト)もかからない。矛盾が起きて、それから、よっこらせと深い推論に入る。なぞなぞは深い推論ゲームなのです。