タロウと一緒に<別バージョン>

 
 朝は比較的涼しい。朝一のクラスがあるので半分寝ている頭でアパートを飛び出す。

 あっ、また香水ふりかけるの、忘れた。もらったものだから、何とかして使い切りたい。

 タロウがいつものように自転車置き場のそばにあるゴミ箱をあさっている。ボクが姿を現すと、若干警戒、若干何かに期待する顔をこちらに振り向ける。

 おはよ。フン! これがボクたちのアイサツだ。

 またタロウはゴミ箱にあるビニール袋に入った残飯の処理に意識を集中させた。

 ボクはいつものように自転車をこいで、学校とアパート街の門に向かおうとした。そのとき、

 そっち、行けないよ

 という声がした。振り返ったが誰もいない。気のせいか。

 やはり、門が閉まっていた。先ほどの声が言ったとおりだった。太郎が一通りの食事を終え、ボクの後を付けてきたようだ。

 タロウは茂みの中に入っていた、ボクを促すようなそぶりで。僕は自転車をわきに止め、後についていった。太郎は二度ほどくしゃみをした。後ろには振り返らない。

 立ち止まった。木のにおいを嗅ぎ、放尿した。そして、終えると、ブルブルと2,3回震えた。

 20分後、かなり奥まったところまできた。学校に行く近道に導いているのかと思ったが違うようだ。

 2時間後、太郎は木の実のようなものを口にくわえて、それを飲み込んだ。その後すぐ、ゲホゲホ言って吐き出した。どうやら、食べられるものではなかったらしい。

 タロウはあくびをして、後ろに振り返った。一瞬驚いたような顔をした。ひとつ吠えた。

 あー、やっぱり香水を振りかけておくべきだった、ボクは後悔した。