日常の中1

 一つ目の自販機には飲みたいと思うものはなく、30mほど離れた自販機で買おうと思った。

 時間は夜の7時を過ぎていたのであたりは暗く自販機の光がまぶしいくらいだった。

 よう!  友人のMが近寄ってきた。
 よう!  会うのは1年ぶりだった。
 何してんの?時間ある?
 え、何?
 ちょっとねー と言ってMはさっさと歩き出した。何をするのか聞こうと彼の隣に行くと、

 イヤー最近巨人弱いね と全く関係のない話をした。言いたくないことなのか。

 Mはわざわざ車の隙間を歩くように前を急いだ。急に立ち止まり車の後部座席を開けた。そしてこちらも振り向かずに乗りこんだ。

 近づくとMは車内から、乗れよ と言ってボクを促した。後部座席にはMの他に2人の男が乗っていた。運転手はサングラスをかけずっと前を見たままだった。

 Mのとなりの男たちはアロハを着ていた。ニ言三言ふたりで話したコトバは日本語ではなかった。

 彼らは誰なのか、どこへ行くのか、そして何をするのかという質問ができない雰囲気だった。Mも黙って前を向いていた。  

 車は30分ぐらい走って、田んぼが広がる道の脇に止まった。前から黒いベンツが現れ、反対車線で止まった。後部座席から男が降りてきて、ボクらの車の助手席に乗った。

 運転手が軽く頭を下げた。Mとその隣の外国人は彼の存在を知っているようであった。

 その男は誰が見てもヤクザそのもので、後部座席に振り向いて、Mに、

 その写真で大丈夫か  と聞いた。Mは これじゃわからない と言って、財布から取り出した写真をボクにチラッと見せてヤクザに渡した。

 その写真には膝まづいて後ろ手に縛られた男がいた。