或る日常Ⅶ

 休みの日、部屋で寝ていると下の階からユウヤの泣き声が聞こえてくる。
 
 また叱られているな と思いながら昼まで寝る。昼過ぎ頃腹が減ったので台所に下りてくるとユウヤは金魚のフンのように母親の後に付いて歩いているのが見られる。
 
 最近ようやく歩けるようになった。でも外で遊ばせるのはまだ早い。家の前は道路なので特に気をつけなければならない。

 しかしながら家の中では退屈らしくしきりに外に出たがる。洗濯をするにも、掃除をするにも、食事を作るにも常にユウヤがうろついているので母親はうざったく思い、つい怒ってしまうらしい。

 僕が台所で新聞を読んでいるとユウヤは寄ってくる。かまってほしいらしく新聞を読ませてくれない。起きたばかりの僕にはこのテンションにはついていけない。

 母親の前では絶対触ってはいけないハサミを持って新聞を切ろうとする。母親が台所に入ってくるとパッと放して触っていなかったかのようにふるまう。

 今、ユウヤ ハサミ触ってたよ

 と言うと本気で怒り出す。母親がいなくなると、

 チンチンよしのり バカ!と言いながら殴りにかかってくる。

 クレヨンしんちゃんの影響らしくなんにでも「ちんちん…」とつける。僕が、チンチンユウヤ元気か?と言うと、

 他の罵声のコトバを見つけようとするが、まだボキャブラリーが少なく対抗できない。それでも母親の近くにいると叱られるので僕のそばにいようとする。

 本当に勉強したいときは部屋ではできない。だから、休みになると図書館に行くようになった。受験勉強のようである。

 僕がいないので、また母親の後について歩いてるのだろうかと思いながら勉強するのもいいものである。

 まあ、この勉強のおかげで大学院に入ることができたのだが…