雪のワルツ

 その日の体育の時間は外でサッカーをすることに決まった。外は50cmぐらい雪が積もっていたが、良い天気だった。

 グループを2つに分けて雪の上でのサッカーとなった。両チームとも当然半袖半ズボンである。

 気の高揚で寒さなど全く感じなかった。両グループの学生は白い息を出しながら、全く前に進まないボールを追い駆けまわした。

 30分ぐらいたった頃、僕はボールを蹴ろうとして軸足をひねってしまった。足が痛くて走れなかったので体育館の壁に寄りかかって痛さの治まるのを待った。

 身体から湯気が出ていた。足は痛かったがとても気持ちがよかった。日が射しているのに雪が降ってきた。これも「狐の嫁入り」というのだろうかと考えていた。

 パラパラと降っているぼたん雪は神聖に綺麗だった。遠くで学生がサッカーをしている風景はまるで映画のワンシーンのようだった。

 ボーッと見ていると雪の中の学生が雪そのものになり、空を舞っているような幻想的な美しさが僕を天国にいるような感じにさせた。

 みんな ワルツを踊っている

 あはっと気付くとグラウンドにはだれもいなかった。うとうととしていたらしい。寒さで目が覚めてしまったようだ。このまま死んでもよかったのにと思った。

 足はちょっと痛かったが歩けないほどではなかった。教室に入るとムッとした熱気が身体に当たった。次の時間は数学だったので数学の教科書を出していると日本史の教師が入ってきた。
 
 教師の方が間違ったのかなと思ったが、皆何も言わなかった。体育が2限目で数学が3限目、日本史は4限目だった。皆、日本史の教科書を出していた。